エピローグ

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エピローグ

 フランスパリ北郊にある『スタッド・ドゥ・フランス』スタジアム。  オリンピック、パラリンピックの開会式が行われたこのスタジアムのトラック上のスタートラインに、僕と陽毬は他の視覚障害者(ブラインド)マラソンの選手、伴走者(ガイドランナー)二五組と一緒に並んでいた。東京パラリンピックの時と違って、スタジアムの観客席は超満員で物凄い喧騒に包まれている。  陽毬と僕は日本での視覚障害者(ブラインド)マラソンの選考レースを勝ち残り、このパラリンピックへの出場を果たしていた。一度、走る事を諦めた僕がこの世界一を競うレースに参加しているという事実は本当に感慨深かった。  そして……。  右手の黄色い『きずな』の反対側をギューっと握っている陽毬を見つめた。彼女ともう一度、この世界の舞台で一緒に走り出すこと……。それは大学時代の僕と陽毬の夢だった。そして二人で一緒にメダルを取るということは僕達の大望(アンビシャス)だったけど、きっと叶わないだろうと考えていた。でも今、僕達はその大望(アンビシャス)を実現する機会(チャンス)を得た。  陽毬が僕を振り返り笑顔を向けてくれる。 「頑張りましょうね。絶対、貴方と一緒にメダルを取ってみせるわ」 「ああ、僕も君をしっかり伴奏(ガイド)するよ。一緒に夢を叶えるんだ」  陽毬が大きく頷くのが見える。
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