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訪問者
とある貸しビルにある如月探偵事務所。その応接用ソファに座り、両足をブラブラとさせながら赤毛のショートヘアの少女は壁にかかった額縁を眺めてニヤニヤしていた。
『可愛すぎる探偵』
自称探偵助手のステラをニヤニヤさせているのは常套句で紙面を飾った新聞記事だ。半年前に探偵コールが有名画家ミッシェル・ガイアの遺産相続問題を解決した事で、如月探偵事務所は脚光を浴びた。しかもコールは知る人ぞ知る、セブンポーカーとも呼ばれているセブンカード・スタッドでランク1位のプロプレイヤーだ。話題性は十二分にあった。しかし気まぐれなコールが、興味もない新聞記者に応える訳もなく。愛想良く対応する自称助手のステラが載るのは必然と言えた。さらに依頼人が増えてもコールは興味が無いと断るばかり。その中から孤児のステラが小遣い稼ぎとして出来る範囲で対応していた為、徐々に如月探偵事務所と言えばステラというイメージが世間に浸透した。自称助手ではあったが、コールはそれを黙認していた。
扉の磨りガラスに人影が写り、ステラは背もたれから降りると身なりを整えた。
「いらっしゃ」
「やあ」
「ウォーカー警部補!」
スコップランド警察からは、たびたび捜査協力依頼の連絡が来ていた。もちろんコールあてにだ。しかし受けたためしがない。ところが以前からコールと顔見知りのウォーカーが足を運んで来たという事は、今回はそれなりの事件なんだとステラは一瞬で悟った。
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