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「それとさ、オレの写真とか動画とかは消してくれな」
「は? ざけんな却下」
「……盗撮だぞ」
「じゃあ今すぐ俺と一緒に暮らせば。そしたらもう盗撮する必要もなくなるけど」
それには少し言葉に詰まってしまった。
丁度話そうと思っていたことなのだ。
「あの、さ、そのことなんだけど。仕事がまだ落ちつかねえから、今直ぐに引っ越しとかは難しいかも……」
実家を出てからはずっと一人暮らしだったため、急に誰かと暮らすとなると生活のリズムが崩れ、仕事にも支障が出てしまうかもしれない。
しかも一緒に生活する相手がこの琉笑夢となると、彼の仕事の関係は勿論のこと、なかなか苦労させられそうだ。
昨晩の激しい行為で体力の差を思い知ったことも理由の一つではあった。毎日求められては持たない。
しばらくは互いの部屋を行き来して週末に泊まるとか、そこから一緒にいる時間を前よりも増やしていってゆくゆくは……という感じで距離を縮めていきたかった。
ただ、琉笑夢がそれを許してくれるかどうかが問題だ。
「じゃ、慣れるまでは俺の家に来て泊まれば」
「へ? いいのか?」
あまりにもさらりと頷かれて拍子抜けする。てっきり駄々を捏ねられるかと思っていたのに。
それに、琉笑夢の部屋を訪れる許可をもらえたことも予想外だった。
というのも、意外に春人は琉笑夢の部屋に行ったことがないし、住所も知らないのだ。
琉笑夢が春人の部屋に来ていたのでこちらが動かなくとも彼には会えていたし、そもそも芸能人なのでおいそれと他人に住所を教えないというのが当たり前なのだろうと思っていた。
そのこともあって、琉笑夢が自分をそういう意味で好いてくれているのかどうか確信が持てなかったというのもある。
例えば好きな人を部屋に連れ込んでいるため、部屋には来てほしくないとか。
「いーよ。春の仕事場から、家近えもん……」
「ん? 近いって、それほんとか?」」
それは初耳だった。
一応仕事場は都心ではあるが端のほうで、決して芸能人たちが住まう高級住宅地などではない。
「ほんと。結構、目と鼻の先」
「てことはもしかして……あのでかくて高級そうなマンション? 通り越えたとこにある」
「たぶんそれ。あの斜め向かいの、高層で窓がでかくて多いやつ。白と黒の外装の……オーンジュって名前」
春人の想像しているマンションの外見がほぼ一致した。名前も確かそんな感じだった気がする。昼飯を買いにコンビニへ向かう途中で必ず横切るマンションだ。
クラシックな外観で、でかいなー金持ちしか住めないんだろうなーなんて通るたびに見上げてしまっていた。まさか琉笑夢があそこに住んでいたなんて。
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