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「えっ」
「そしたらなんか店で祝杯あげてた」
「ええ……ええ……」
「道子さんに聞いてみれば、テンション上がって酔っぱらったまま地酒何種類も送り付けたって言ってたから」
「は、はあ? なんで母さんに!?」
「知るかよ」
この間、道子に二人で報告しにいった時はそんなこと一言も言われなかったというのに。酒にはさほど強くはないが日本酒好きな母だ、隠れて毎晩ちょこちょこ飲んでいたのかもしれない。
飲み終った後に、「あのねえ春、そういえば京ちゃんからお酒が届いたのよ。私嬉しくって全部飲んじゃったわ、はいこれあげる。大切にとってて」とか空の瓶を渡されそうだ。
「じゃ、じゃあ親父さんには」
「親父にもババアと同じこと言われてきたし、報告したら喜んで友達呼んでパーティーしてた」
「は、は?」
「だからそういうのは親父が日本に来たときぐらいでいい。あとアイツ日本語話せねえし。『シュウマイウマイネー』ぐらいしか言えねえもん、能天気だから」
琉絵夢の家系は、鈴木なんて弱々しい苗字がさらに霞み過ぎるぐらいに濃い。
「……おまえの血筋ってどうなってんだよ」
いろいろと居たたまれなくなって、頭をかかえてお湯の中に鼻の下ぐらいまで入ってみたが、予想していたよりもぬるくなっていて寒くなった。
ぶるりと震えると、琉笑夢がさりげなく春人の体をさすり、ノズルを引っ張ってきて背にシャワーを流してくれた。
こういう気遣いは、さらっとしてくれるんだもんな。
「あー……ありがとな。あったけぇ」
ゆったりと、シャワーのお湯がまんべんなく広がるよう背中を撫でられる。混乱している思考回路に、このあたたかさはとても染みた。
混乱させてきたのは他でもない琉笑夢ではあるが。
「春」
「んー?」
「一緒に住むとこ、おいだき機能あるところにしよ」
「はは、そーだな」
「まあ、俺が今住んでるところは普通にあるけどな。浴槽もこんな窮屈じゃねえし」
「むかつくなおまえ、どうせここはしょぼいマンションだよ」
「別にディスってねえよ、こうやって春とくっついてられるし、天国。幸せ」
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