チンチラを飼うか飼わないか──(番外編/その後の二人②)

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 怒りのポイントはそこか! 「お、おまえのキレるポイントマジでわかんねえな!」 「ああそう。わかってねえからそうやっていっつも失言すんのか。いや、わざと……? 俺のこと振り回したくてわざとそうやって煽ってんだろ……面白がってんだろ、なあ」 「わ、わざとじゃないわざとじゃない、本当に!」  ぎりぎりと肩に食い込んでくる爪が痛い。このままだと突き刺さってしまう。しかし琉笑夢の瞳は瞳孔が完全に開ききっていた。しかも血走っている。  これはやばい、本当にやばい。やば 「犯す、5日間ぶん」 「あっ、待て、待て違うから、オレ言っただろもしもって、ア、あっ……ちょっ」  結局、春人がまともに眠れたのは日付が完全に過ぎてからだった。  * * *  狭いベッドの上で、琉笑夢の胸はすうすうと規則正しい寝息をたてながら膨らんでいた。  薄く開いた唇は緩み眉尻も下がっていて、完璧に寝入っている顔だった。 (安心した顔してんなあ、コイツ)  眉の形も細く凛々しくなり、顎はシャープになって精悍さは増したものの、幼い頃のようなあどけなさの残る寝顔だった。  そういえば、チンチラは就寝中も些細な物音で目を覚ましてしまうらしく、心の底から安心しきっている環境以外で熟睡することはかなり難しいらしい。  琉笑夢も、春人が傍にいてやらないといつも眠りが浅くなってしまう、らしい。  神経質な一面があるところといい、拗ねて布団をこんもり被って引きこもっていた恰好といい、重そうなまぶたに隠されてはいるが、実は深い二重でくりっとしたアーモンド形の目といい。  やはり琉笑夢はチンチラにもそこはかとなく似ているのかもしれない。  時計を見れば、針の示している時間は午前4時をちょっと過ぎたところだ。
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