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共にベッドに入った時、琉笑夢の腕はしっかりと春人の背中に回っていたが、次に目が覚ますと腕は外れていた。
それでも、春人のスウェットの袖は決して離さないとばかりに握りしめているのだから、琉笑夢らしいというかなんというか。
穏やかな顔の琉笑夢を起こさないよう、長い指を一本ずつ外していく。中指まで外し終わったところで琉笑夢のまぶたがふるりと震えたが、それが開くことはなかった。
慎重に全てを外し終えても、琉笑夢は眠ったままだ。
閉め切られたカーテンから外の薄明りが差し込んでいて、ほんのりと青が濃い。一部の木目が見える床にそうっと生足を置くと、ひやりとした床の冷たさと共に青い埃がチラチラと浮かび上がり、舞った。
ベッドを軽く軋ませながら、抜け出る。
腰が若干重く軋んだが、もうこの痛みには慣れた。タフになったものだと春人は自分自身の図太さに感動しつつ、まあ、あれだけ求められればな……と諦めの気持ちで軽く腰をさすった。
薄闇の中、テーブルやカーペットに足をひっかけないように部屋の中を進み、静かにドアを開けて廊下に出る。
ドアを閉める寸前ちらりと部屋の奥をうかがったが、琉笑夢は依然としてベッドから腕を投げ出したまま微動だにしない。
よかった、あれだけ気持ちよさそうに寝ているのだから、起こしてしまうのは忍びない。
春人と触れ合えば疲れも取れるなんてことを言っていたが、今日は撮影が長引いて大変だったようだ。きっと、本人が思っている以上に体は疲弊していたはずだ。
琉笑夢は一度寝たらなかなか起きない。このまま朝までぐっすりだろう、そう思っていたので、そのままトイレへと向かい用を足し終わってトイレから出た瞬間、目の前の闇夜にぬぼっと黒いマネキン……ではなくて琉笑夢が立っていたことに、心臓が飛び出そうなほど驚いた。
「うおっ! な、なんだよ、びびったぁー……」
どきどきと跳ねる心臓を押さえながら、立ちっぱなしの琉笑夢を見上げる。
うつらうつらとしながら、パソコン越しに目が合うのよりも怖かった。
「ごめん、起こしちまったか? あ、それとも次使う?」
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