1455人が本棚に入れています
本棚に追加
消えたぬくもり求めて手をさ迷わせていたのだろうか。夢の中でも、起きてからも。
「ん──そか。ごめんな。おまえ寝てたからさ、起こしたらまずいと思ったんだよ」
「……そんなん、いんねえし」
「だって、いびきかいてたぞ?」
「うそつくなよ」
「うん、うそ」
軽口に、琉笑夢が苦しそうにきゅっと唇を閉じた。腕を軽く引き寄せる。琉笑夢の腕に深く抱きしめられた。縋り付いてきたと言った方が正しいもしれない。
長身の琉笑夢の背に腕を回して、ぽんぽんとその背を叩く。
「ほら、戻るぞ。おまえ手ぇ冷えてんなー、いつからいたんだよ」
なんてことないように、自然な仕草で琉笑夢の手を引いて二人でベッドへと戻る。
琉笑夢の方が長くベッドの中にいたはずなのに、その足の裏は冷たい。あたためてやりたくて足を絡める。
琉笑夢は目を閉じることなく春人をじっと見つめてくる。薄闇に光る瞳は、繊細で、触れたらもろく崩れてしまいそうな青いガラスの破片のようだった。
「寝れそうか?」
置くべき場所が見つからないのだろう、徐々に離れていく頭をそっと抱き寄せ、幼い頃によくしてやったように額と額をこつりと合わせる。
「眠れないのか?」
黙ったまま、小さくこくりと頷く琉笑夢。
何か言いたいことがある時の、琉笑夢の癖だ。
「そっかぁ、なんでだろーな」
唇にくっついている髪をとって耳にかけてやると、琉笑夢がもっとと顔を寄せてきた。ふんわりとした金色の髪をゆるゆると撫で続けていると、琉笑夢がやっと口を開いた。
「こわくて」
「なにが?」
「……だって、怖いんだ」
「うん、なにが怖い、琉笑夢」
再び閉じてしまった琉笑夢の唇を指先でなぞり、何度も、端から端までを往復する。
琉笑夢の指がそろそろと伸びてきて袖をぎゅっと掴まれた。その手に手を重ね頬へと持っていく。
「また、イヤな夢でも見たのか? そういや前にカバに食われる夢みた、って飛び起きたことあったな。またカバか?」
「いつの話してんだよ……」
「だっておまえ、しばらくTVにカバ出てくるとオレに突進してきたじゃん」
最初のコメントを投稿しよう!