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春人は、琉笑夢の中で燻っているものが何なのか、ぼんやりとわかったような気がした。
口に出すことはしない。あの琉笑夢が必死に、それだけは言わないようにしているのだから。
「俺のもので、いて」
──抑えられないから、本当にしちゃうから。だから、だからペットなんか飼わないでよ、お願い。
「俺、こわいんだ……」
琉笑夢の言葉は脅しなどではなく、全て懇願だった。
こわいと怯える琉笑夢は本物だ。きっと琉笑夢は自分自身を恐れてもいる。
春人がいなければ、小さな小さな命ですら憎悪と殺意の対象となってしまう自分ことを。
春人は深く目をつぶった。
「おまえのものだよ、最期まで」
子守歌を口ずさむように、そばにいると繰り返してやる。
「いらねえよ、チンチラも……それ以外も」
バカだな、琉笑夢。
可愛いものが好きだからといって、そんなもの、望んだこともないのに。
琉笑夢がいるから望めないのでもない。小さな小さな命、それらを「そんなもの」と言えてしまう時点で、春人の一番が何かなんてわかりきっている。
まさに、割れ鍋に綴じ蓋。
春人が一切感じていない罪悪感を、描いてすらいない未来を。
琉笑夢が背負う必要などないのだ。
「おまえだけだよ」
春人はちゅ、と青白い額にキスを落とし、琉笑夢が再び眠りに落ちるまでその体を抱きしめていた。
チンチラを飼うか飼わないかなんて、はなはだ愚問だ。
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