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19歳──05
「……へえ、おまえがそれ言う? じゃあどうやったら春、俺のこと見んの」
そんな、痛みを堪えるような顔でまた同じ台詞をぶつけられることになるなんて。
この一件があってから、琉笑夢は逃げるように父親の元へ行ってしまった。しかも3年という長い間だ。
2年前こっちに戻って来た時は、琉笑夢はすっかり青年の体付きになっていた。そして海外にいた頃からじわじわと始めていたらしい芸能活動を日本に移し、そこからとんとん拍子にモデル、タレント、歌手とキャリアを積み重ね──そして今は俳優の道へと。
「別に……大根演技だって叩かれようが炎上しようがどうでもいいんだよ。ファンが減るのも別に関係ない、『俳優』って肩書きが付くことが目的だから」
久しぶりに再会した時、立派な青年へと成長していた琉笑夢に驚いた。
けれども琉笑夢は芸能界という華々しい世界に飛び込んで有名となりせっせと稼いでいるくせに、以前と変わらぬ態度で一人暮らしをしている春人の元へ足繁く通った。
そして以前と同じように春人にべたべたくっき、時々キレた。
図体ばかり大きくなっても中身はまだまだ子どもだなと、春人の方も彼を変わらぬ態度で迎え入れた。
変わったことと言えば、ふいに唇を奪われるようになったことだ。拒めなくて好きにさせている。
そして、これまでは華奢な琉笑夢を足の間に座らせていたけれども、今では後ろから抱き締められるのは春人の方だった。
それに海外から帰って来てから、琉笑夢は春人のことを「春にい」とは呼ばなくなっていた。
「本当は18歳になったら言うつもりだった。19に、なっちまったけど」
18歳という年齢にこだわっている理由は直ぐにわかった。
この国で男性が結婚できる年齢は、琉笑夢が迎えにくるといった18歳だ。
「おまえの提示した条件全部満たした。だから」
あんなもの何も考えずに適当に発した台詞だ。子どもの戯言を躱すために口にしただけに過ぎず、深い意味なんてない。
それを琉笑夢は、春人が提示した条件だと言う。
その条件を満たせば春人と一緒になれると、本気で考えていたのだろうか。
フォロワーが500万人を超えた瞬間、仕事で疲れているのにもかかわらず春人の元に駆け付けた琉笑夢。
そんなの一言メッセージを送ってくれればすむことだというのに、それでも彼はこんな夜中にわざわざ春人に会いに来た。
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