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「それでも俺のこと構ってくれる」
「構わねえとおまえ機嫌悪くなるだろ」
「今みたいに、夜中に突撃してきたのに追い返さないで部屋に上げてくれるし」
「……ドアぶち壊すって脅してきたのはどこのどいつだ」
それにどんなに見た目が大人っぽくなったって。
例え春人よりも稼いでいたって煙草を吸っていたって、琉笑夢はまだ20歳前なのだ。
未成年をこんな深夜に放り出すわけにはいかない。
「ゲーム機、水没させたし」
「……ああ、あったなあ」
「あれは酷かっただろ」
琉笑夢がふと遠い目をした。
ゲーム機は高かったので、構えと喚く琉笑夢と徹底的に無視をする春人の攻防戦が二か月続いた後に、琉笑夢がお年玉や小遣いを叩いて新しいものを買ってきた。
相変わらず琉笑夢は絶対に謝ることはしなかったけど、バツの悪そうな顔に怒りが削がれた。
「酷かったじゃん。俺いつも酷えこと、春にしてる」
琉笑夢との付き合いももう13年だ。
いつもいつも些細なことで嫉妬の感情が振り切れてしまう琉笑夢が春人の私物をめちゃくちゃにしても、叱り飛ばして怒ってげんこつの一つくらいで許してしまうのは。
懲りずに同じことを繰り返す琉笑夢のことをどうしても春人が嫌いになれないのは。
「周りが……見えなくなんだよ、春のことになると」
──知っているからだ。
「感情の抑えが効かない。俺にもわかんねえんだよ、なんでこんなに、春に……なんで」
苦しそうに、噛みしめた唇の隙間から唸る琉笑夢。
琉笑夢は他のことでは絶対に感情を爆発させない。基本的に誰に何を言われても鼻で笑い飛ばすだけで相手にもしない。
春人を筆頭に、春人の家族、琉笑夢の肉親や数人の友人などを除いた人間に心を開くこともなければ、冷えた態度を崩すこともしない。
昔から春人に関することだけだなのだ。どうしても感情が抑えきれず情緒が不安定になってしまうのは。
「琉笑夢……あのな、オレは」
そんな琉笑夢の心に渦巻く矛盾を、春人はやっぱり抱き締めてやりたいと思うのだ。
「──まあ別に嫌がられても別にいいけど。監禁すればいいだけの話だし」
「……ん?」
琉笑夢に向かって伸ばした手ががっちりと掴まれる。
ゆるやかに細められていく琉笑夢の瞳を見ながら、あ、来るなと悟る。この顔はスイッチが切り替わる直前の顔だ。
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