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「なんだよすっげえ偶然じゃん! いつから?」
「こっち、帰って来てから、すぐ」
ということは、住み初めて結構経っているはずだ。
「なんで言ってくれなかったんだよ」
「なんでって……だって……」
再びうつらうつらしかけているのか、琉笑夢の呂律が怪しくなってきた。
案の定、琉笑夢のまぶたがゆっくりと落ち始める。昔から琉笑夢の眠りは結構唐突だ。
話している最中に急にこてっといくこともあれば、二人で映画などを見ている最中でも琉笑夢が飽きればさっさと寝ていることもある。
そんな時は無理に起こすことはせず、髪に指を差し込んでよしよしと撫でてやれば機嫌よく眠ってくれる。
今もそうだ。撫でてやっている手に琉笑夢がすり、と頭を寄せてきた。
背に回されている腕にあまり力が入っていないのは、相当眠いからなのだろう。
「怒られると、思って」
「怒る? なんでだよ」
「怒んねえ?」
「……内容による」
「怒んねえ?」
「──わかったよ。怒んねえから話せ」
頬にかかって、くすぐったそうな前髪を耳に掛けてやる。
手のかかる男だ。薄っすらとまた目が開きそうになったので、いいから寝とけと耳元でささやけばまた閉じられた。
幸せそうにうとうととしながら、琉笑夢はこれまた幸せそうな声色で続けた。
「んー、部屋からのぞいてたから……双眼鏡で」
「のぞく? 何を」
「春の……仕事場」
びしりと、次は琉笑夢の唇に張り付いている髪を一本取ってやるつもりだった手が止まる。
「──は?」
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