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毘沙門象の前で腰を抜かしていた男は、恐れを抱きながらも、鬼の言葉を気にしている様子でございました。
鬼の申し出を受けるかどうか、おそらく、男の中では半々のつもりでいたのでございましょう。
しかし、手練れの悪賢い鬼に対し、迷いがあるようでは話になりませぬ。
愚劣な鬼が、この男の心の隙を逃すはずはないのでございます。
「俺をここからたすけてくれたなら、おまえの願いを叶えてやろう」
鬼が言いました。
すると男は、あっさりと乗ってきたのでございます。
愚かなこと、この上ないことにございます。
鬼の歪んだ顔は、歓喜にさらに歪みました。
「教えてくれ、俺はどうすればいいのじゃ?
どうすれば、おまえをたすけられるのじゃ?」
男は鬼にそう尋ねました。
すると、鬼は男にあることを話しました。
これを聞いた男の顔は途端に青ざめ、体は震えだしました。
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