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謙信公の魂はその場に倒れ、体と一つになりました。
その後、謙信公が二度と起き上がることは無かったのでございます。
男がそこまで言い終わった後、少しだけ間が開いた。
その間、この薄暗い部屋は静まり返っていた。
武将の額から頬を、汗が伝い落ちた。
囲炉裏の火が消えかかっていた。
「何とも気味の悪い話じゃな。ところで、願をかけた男の願いは叶ったのか?恋敵を殺すという願いは」
「はい」
武将の問いに、男はすぐに答えた。
武将は驚いたようだった。
「鬼といえど、一度した約束を違わぬとは殊勝なものである。わしも会うてみたいものじゃ」
「鬼に、でございますか」
男の言葉に、武将はうなずいた。
「たとえ鬼であろうとも、願うたことを叶えるのならば、神でもあろうし、仏でもあろう。わしも、その鬼に願をかけてみたいわ」
武将が言うと、途端に男は声を上げて笑い出した。
武将は戸惑いと怒りとが入り混じった顔になった。
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