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何番目かの話が終わった。
「次は何の話じゃ?」
さっそく武将は若い男に問うた。
「さすれば、謙信公の話をいたしたいと存じます」
男は澄んだ声で答えた。
「謙信とな。上杉謙信か?」
「はい、越後の虎と呼ばれておりました上杉謙信公。
その最期について語りとう存じます」
「それは面白い。是非に聞かせてくれ」
武将の言葉を受け、山伏姿の男は深々と頭を下げた後、語り始めた。
「謙信公が在所にて亡くなられたのは、齢四十九の時でございました。
甲斐の武田信玄公とは川中島において五度にわたって戦い、亡くなられる前年には、加賀手取川にて織田信長の軍勢を敗走させております。
いかに謙信公が強かったか、今さら語る必要はないかと存じます」
「たしかに、謙信は恐ろしく強い男だった」
男の目の前の武将が、二度三度とうなずきながら言った。
「ところで、ある時、この謙信公のもとへ一匹の鬼がやってまいったのでございます」
そう言うと男は、目の前の武将をちらと見て、再び語り出した。
「この鬼は人と変わらぬ背丈でございますので、さほど大きくはございませぬ。
しかしながら、この鬼は、死を司っているのでございます」
「死を司っている、とな?」
「この鬼、邪鬼と申しましょうか、憑りつかれたが最後、その者は死を迎えてしまうのでございます」
「む・・・・・・」
武将は言葉に詰まった様子だった。
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