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「いや、もうすでに会うておられるのでございますよ」
男は顔を伏せたままで言った。
その声は、それまでの澄んだ、よく通るものから恐ろしげなものへと変わっていた。
「どういうことか」
武将は血相を変えていた。
側に置いていた太刀の柄を握った。
すぐにも、太刀を抜ける態勢であった。
男はゆっくりと顔を上げた。
そこには、今しがたまで武将と語らっていた青白い顔は無かった。
代わりにあったのは、大きく裂けた口から禍々しき牙を見せ、額に幾本かの角を生やした、化物の顔だった。
「きさま、鬼か」
武将はなおも何かを言おうとしたが、それ以上言葉が出てこなかった。
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