【2】リクト

1/1
前へ
/5ページ
次へ

【2】リクト

 今日は僕の初めての握手会だ。  ドキドキするな、緊張するな。  むしろ心臓が口から出て来そうだ・・・。  ルックスなんて、全然自信が無い。  でも今日はメイクさんの力を借りて、何とか見られるようにして貰えてるはずだ・・・。  いつもボサボサの髪もカットしたし。  ちゃんと服だってスタイリングしてもらって今時なはずだ。  ほら、鏡を見たら、いつもの自分と違う、アーティスト【リクト】がいる。  世間からは孤高とか言われる。  いや、普通だって。  むしろ、今のこの状況が僕にとって異常なんだ。  でも、僕の沢山のリスナーの皆さんが僕を待っている。  ファンとお呼びするのもおこがましい気がする。  そして、僕が全然売れない時に、動画にアップした曲が好きだと言ってくれた子も、手紙で今日来るって言ってた。  ファンは皆平等だってアーティストさんは言うけれど、やっぱり彼女みたいな子は印象深いんだ、僕だって人間だからね。  彼女に会えたら、何て言おうか?  多分、僕にはありきたりな事しか言えないんだろうな・・・。 『いつも、ありがとう』
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加