青い自殺

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 祖母は私の全てを理解し、共有してくれる相手ではなかった。同い年の友達に比べれば、祖母はジェンダーの話題になかなかピンと来ないようだったし、私がゲイなのかゲイじゃないのか、最期まであんまりわかっていなかった。それでも母のように私を善意で侵略し、虚像の私を上書きして私と話すようなことは決してなかった。  ただし拒絶されたことは、一度だけあった。  ある時段差に躓いた祖母を私が支えた時、祖母は荒々しく私の手をはねのけ、自ら尻餅をついた。 「ほんまにあんたはっ、気持ち悪い扱いせんといて! こんくらい平気や!」  地面にへたりこんだまま、祖母は烈火のごとく怒っていた。 「修造さん、あんた紳士なんはええことやけど、私がそないな風に扱われんの嫌いやって知っとるやんかっ、知っててやっとるんか!」  ――私のことを、祖父と勘違いしている。  すぐ気づいたのは、私が以前から祖父に似ていると言われることが多いためだった。本人は私が生まれる前に亡くなったので、私は遺影を見ながらそんなに似てるかなあとよく首をかしげたものだった。  祖母は束の間、私の知らない人になっていた。知らない人が、私を見て、私ではない人に怒っている。  私は動けなかった。祖母に叩かれた手が熱く痛むはずなのに、空気がやたら冷たく感じた。
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