1人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ブルーゾイサイトがいい」
考えるよりも先に、私の唇が動いていた。
「ブルーゾイサイトって、ああ、タンザナイト……しろちゃん、ルビーでもトパーズでもアクアマリンでもええんやで。安物しか買えへんけど」
祖母は言い聞かせるように伝えたが、私は首を横に振った。
「ブルーゾイサイトがいい」
駄々をこねるような響きに、祖母はなははと笑った。
「ええよ。買ったるわ、なんぼでも」
杖を頼りに一人で歩きだそうとして、祖母は差し出された手のひらに気付いた。祖母はその手を強く強く握った。私も強く握り返した。祖母の手は皮が薄くなっていて、紫色の静脈がつまめるくらい突き出ていて、ひんやりと冷たかった。それなのに痛いくらい力は強くて、熱い血潮が皮膚越しに流れ込んでくるようで、私は今祖母の魂と手をつないでいるのだと思った。
私たちは素敵な友達と一緒に歩いた。足取りは軽く、歌い出したいほどだった。
今や、身体こそが装飾品だったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!