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祖母は善良で聡明な人だった。八十歳が近づいても、頭がしっかりしていて、一人できびきびと家事をこなし、たまに家に迷い込んでくる野良猫の世話をしていた。
共働きの両親を持つ私は、電車で数駅の祖母の家に小さな頃からよく預けられ、すっかりおばあちゃんっ子となった。小学校に上がる以前、私が最も話をした相手は紛れもなく祖母だった。
その日も幼い私は祖母の押し入れの整理を手伝っていた。押し入れの中に半身入れた祖母が渡すものを、丁寧に並べていくのだ。
畳には大小様々な箱が整列した。中でも私は、つるんとした手触りの、直方体の白い箱が気にかかった。箱には切れ目が入っていて、力を入れるとワニのようにぱっくりと口を開けた。
中には、銀色の鎖に青い石がついた、ネックレスが入っていた。
薄い青が藍色と紫色を飲み込んだ、日没のほんの数分前の空を閉じ込めたような色だった。
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