1人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
私が惚れ惚れと見入っていると、祖母が手に持っていた紫色の巾着を床に置いて言った。
「ええもん見つけたな。タンザナイトっちゅう宝石のネックレスや」
私は両手で箱を掲げ持ったまま、祖母の言葉を聞いていた。宝石というのは、名前すらも美しく、凛と輝くものなのだろうか。
祖母は私に向き直り、正座に座り直した。
「タンザナイトはな、初めはブルーゾイサイトっちゅう名前やったんや。だけど外国の宝石会社のお偉いさんが、ゾイサイトの響きが『スーサイド』に聞こえて縁起悪いわーゆうて、名前を変えはったんが、タンザナイト」
「スーサイドってどういう意味?」
「自殺や」
「自殺ってなに?」
私が聞くと、祖母は目を閉じた。
「自分で、自分を殺すこと」
私はよくわからずに首をかしげた。
「どういうこと?」
祖母は目を開けて、柔らかく唇を閉ざし、数回小さくうなずいてみせた。
「自殺しはった人にしか、わからん」
最初のコメントを投稿しよう!