青い自殺

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 私が小学生になってからも、私のタンザナイトへの恋慕は変わらなかった。しかし祖母は少しずつ変わっていった。  私の手足がまっすぐに伸びるとともに、祖母の背は曲がっていった。祖母は疲れやすくなり、外にもあまり出なくなった。家事を一通り終えてしまうと、ぼうっと外を眺めていることが増えた。 「ばあちゃん、知ってる? 二十歳までに人が感じる時間のはやさと、二十歳から死ぬまで人が感じる時間のはやさは、おんなじくらいなんだって。子供のときは、時間がゆっくりに感じられるけど、年をとるほどはやくなるんだよ」  中学校の制服を見せに行った時、聞きかじった知識を私が披露すると、押し入れの整理をしていた祖母はふふんと笑った。 「そんなん嘘や」 「実際に生きたから知ってるの?」 「そうやで。ばあちゃんはながあく生きとるからな……」  祖母はうなずいてから、ふと遠い目になって、手に持っていた紫色の巾着を撫で、 「もうええわ」  ぼそりとつぶやいた。  その響きはあまりに儚く、私の心臓は戸惑って鼓動の刻み方を一回間違えた。
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