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祖母は私を見て、静かな瞳で問いかけた。
「あかん?」
祖母の白目は濁っていて、けれども真ん中の灰色に褪せた黒目は不思議と澄んでいた。
私はすぐに応じることができなかった。私はすでに祖母が生よりも徐々に死に近づいていることを悟っていた。そして常にして祖母の前では実年齢よりおどけて見せた。私が色濃く此岸であれば祖母を彼岸から引っ張り出せるとでも思ったのか、あるいは無垢であるほど祖母が喜ぶからかもしれなかった。
私はつばを飲んでから、口を開いた。
「だめだよ。まだやりたいこととかあるでしょ。ないなら作ってよ」
思ったよりも明るく乾いた声が出た。
「やりたいことなあ……」
祖母は微笑みながら考えていた。
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