青い自殺

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 女性もののトップスと複数のアクセサリーを隠していたことがばれたのは、それから三年後の、私が高校一年生のときだった。  紺色のトップスは首の周りが大きく開いていて、鎖骨とアクセサリーが最も美しく見える作りをしていた。通販のコンビニ支払いで取り寄せたそれは、私が着ると肩まわりが若干キツかったが、ネックレスを引き立てるためにはこの上なく素晴らしい舞台装置だった。  母は私のペーパーナイフを借りようと、私の学習机の引き出しを開け、詰め込まれていた秘密の花園に気づいたのだった。  押し入れはたまに掃除のために開けられてしまうので、引き出しに入れていたのが災いした。ペーパーナイフは柄の部分の繊細な蔓草模様と宝石の意匠がなんとも美しく、これくらいなら普通の男子高校生も欲しがっていいだろうと思い、先日の誕生日の際に買ってもらったばかりだった。 「史郎、これは何?」  母は狼狽した様子で問いかけたが、私は黙っていた。母がわざわざペーパーナイフを使おうとした原因である、蝋で封のされた薄桃色の封筒を見下ろしていた。  ヒヤシンスの絵が上品に紙面全体を彩っていて、一枚の絵画のようだ。シンプルなダイニングテーブルの上に置いてあるのに、この封筒の周りの空気だけが気だるげに優雅だった。確かにこれは破らずにナイフを使いたくなるだろう。 「史郎は、もしかして、あれなの? 女の子になりたい男の子なの?」  それは私が数百回も数千回も自らに問いかけた言葉だ。  私はヒヤシンスの花弁を見つめて答えた。 「……違うよ」
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