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九、自覚
軍事国家であるナルエフの王宮は、きらびやかさとは無縁の堅牢な城だ。国王の住まう正殿までには、何重もの城門が置かれている。
最後の城門を通り抜けて外に出たレナートは、ほっと肩を撫でおろした。
「何度来ても、息のつまる場所だな」
隣を歩くハッシュに思わず愚痴をこぼす。
レナートは13になる歳まで、この王宮で過ごした。だが、懐かしさなどは微塵も感じない。いつも一刻も早く帰りたいと思うだけだ。
「即位されれば、ここがあなたの城になりますよ」
ハッシュはけろりとした顔で、とんでもない発言をする。
「上がいるのに、それを押しのけてか?」
「我が国は長子相続ではなく、実力主義です。ならば、一番玉座に近いのは殿下でしょう」
「うーん」
レナートは苦笑を返すだけにとどめた。
彼には6人の兄と、弟がひとりがいる。そして、ハッシュの言うとおりナルエフの王位は長子相続ではなく実力重視で、国王と議会が指名する制度になっている。つまり、彼を含む8人の王子全員に、次期国王となる可能性があった。
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