九、自覚

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だが、国は王がひとりで治めるものではない。自分は彼に足りない部分を補う役割を担えばいいのではないか。レナートはそんなふうに考えていた。だが、どこかでそれが自分自身への言い訳であることもわかっていた。 「面倒だな……」  政治的なことより、戦場で馬を走らせているほうがよほど気楽だ。  レナートは憂鬱な気持ちを抱えたまま、帰途についた。無性にオディーリアの顔が見たくなった。  オディーリアは鏡に向かい悪戦苦闘していた。 「だ、だい……す……き?」  マイトに伝授してもらったテクニックをものにしようと頑張ってはいるのだが、語尾にハートマークは彼女には高すぎるハードルだった。 (私よりマイトのほうが、ずっとかわいいんじゃ…)  自分のかわいげのなさに、絶望感すら覚える。 (そもそも、私ってレナートをす、好きなのかしら)  戦場にいるときはそうなのだろうと思った。だが、日常に戻ってみたら、またよくわからなくなってしまった。そもそも、経験がなさすぎて恋愛感情とはなにかが、オディーリアにはよくわからない。 (それに、レナートだって……側室は形だけのものだと言っていたし)
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