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背筋を伸ばした少女の背丈は、フィオよりもほんの少し低かった。
「こっちも訊きたい。何で、セフィの遺体を隠す? さっきウチの親父に言ってたな。ここは今、立ち入り禁止だって」
「……そう……だけど……あの方、お父様?」
上がり框に立って、こちらのやり取りを見守る養父を、少女が指さす。
「養父だけどな。それより訊いたことに答えろよ。何でセフィの遺体を隠してるんだ。まさか、あんたが殺したのか?」
「違うわ!」
「じゃあ、何で隠すんだよ」
少女は、今度は泣き出しそうに顔を歪める。何度も、何か言おうと唇を開き掛けては閉じる動作を繰り返し、そっと息を吐いてセフィの横たわる寝台の端へ腰を落とした。
彼女の漆黒の毛先が、その動きに釣られてフワリと舞う。
俯いて視線を泳がせていた彼女は、やがて吐息と共に言った。
「……まだ、この子が死んだことを、宮廷に知られたくないの」
「どういう意味だよ」
宮廷? と続ける前に、少女が顔を上げた。
「その前に、確認させて。あんた、この子の弟だって言ったわね」
「ああ。双子のな。この顔、見たクセに疑うのか?」
自分で言うのも何だが、この顔はセフィと瓜二つだ。いくら双子でも、性別が違えば性差くらい出そうなものだが、セフィとフィオの場合は体つきまでよく似ていた。
体つきに関しては、あくまで八歳の頃までのことだと思っていたけれど、今も変わっていないようだというのはたった今確認した。
ここまで似ていると大抵、双子の姉妹と間違われる。フィオは男装なのに、だ。個人的には少々へこむが、物心付く前からのことで、もう慣れた。
「まさか」
そんなフィオの心情など、もちろん知らない少女は、一つ肩を竦めると、改めてフィオを見上げた。
「むしろ、幸運だと思ったのよ」
「何?」
眉根を寄せるフィオに視線を向けた少女は、真剣な面持ちでフィオを見つめた。
「あんた、女官として宮殿に入る気、ない?」
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