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そうぼんやりと思いながら、フィオは養父を見つめ返す。
「出会った時に、約束したな。必ず、お前の姉を見つけ出すと」
「……ああ」
それを聞いて脳裏をよぎったのは、今朝の夢のことだ。
内容は、はっきりとは覚えていない。ただ、姉の哀しげな声だけが耳の奥に残る、どちらかと言えば不吉な予兆を孕んだ――
「我々が加平の家を発つ前日、辞令が来たのは知っているな」
加平は、都から直線距離にして十里〔約四十キロメートル〕ほど離れた場所にある。
養父に何かの辞令が届いたのは、一昨日のことだ。それから、なぜか大急ぎで荷造りして、昨日の、夜間外出禁止に入るギリギリの時間に都へ着いたのだ。
「私に、都へ入って訓錬院の職に就くようにという辞令だった。都へ来たのは、それが理由だ」
フィオは沈黙を返す。訓錬院とは確か、武官採用試験や武芸の修練、兵法の講習などを担当する官庁のことだ。
そこへ養父が就任することになったことと、姉の捜索とがどう関係するのか。
「だが、……それは口実だ。私が、家族と共に都へ入るのが不自然でないよう……」
「どういう意味だよ」
「辞令と共に届いた報せだ。結論から言う。お前の姉が……見つかったそうだ」
「……ホントか?」
声音が跳ね上がり、切れ長の目元が瞬く。
八年前、ある事情から生き別れ、行方が分からなくなっていた姉。生まれる前から共にいた、愛しい半身――彼女を捜す為に、フィオは今の生活を受け入れたのだ。
「どこにっ……都にいるのか?」
だとしたら、久し振りに同調するような夢を見たのも頷ける。まさか、こんなに近くにいたなんて――
「ああ。仲間から報せが来た。今、左捕盗庁の遺体安置室にいると」
「えっ……?」
早く会いたい――そう、逸る気持ちが一瞬、停止した。
今、この養父は何と言ったのか。
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