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片想い
「ヤバイ、ヤバイ。どうしよう、エミリ」
翌々日の月曜日。
お昼休みの食堂で、敦子はエミリの腕を掴んだ。
「どうしたんですか?敦子さん」
落ち着いて、とエミリに宥められる。
「忘れられない人が出来ちゃったよ…。それもどうしようもなく叶わない感じの相手」
「なになに?いったいどういう事?」
エミリは、ちゃんと聞かせてくれ、と言って食事を終えたあと、ひと気のない非常階段に敦子を引っ張っていった。
___
「なるほどね……」
ひと通りの説明を聞いて、エミリは腕を組んだ。
「確かに、叶わない感じはしないでもないけど」
「だよね…」
敦子は、落ち込んだ。
やっぱり忘れるしかないよね、と涼也の笑顔を思い出す。
こんな風に誰かのことを強く想うのは、久しぶりだった。
「敦子さん」
エミリは、敦子の肩を掴んだ。
「男と女って何があるか分からないんですよ?諦めるのは、早くないですか?」
「けど…」
「ハンカチ、貸してあげたんでしょ?返してくれるんじゃないですか?また土曜日に行ってみたらどうですか?」
「あ、そうだった…」
敦子は、それすらも忘れていた。
けれど、ハンカチを返して貰ったら、それで終わりの関係なのは間違いない。
だって、大学生だよ?
と敦子は、心の中で繰り返した。
「とにかく!もう一度会えるまで図書館に行ってください」
エミリに励まされて敦子は「うん」と小さな声で言った。
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