処女で悪いか

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―昼休み。 後輩の斎藤エミリと食堂で昼食を食べた。 エミリは25歳で、BL好きの腐女子。 敦子もたまにBL小説を読んでいて、たまたまオタクの集まるサイトで知り合い、同じ会社であることが分かり、運命を感じてすぐに仲良くなった。 アイドル並みの小さな顔に、二重のクリクリした瞳。肩までのフンワリした栗色の髪をしている。 「敦子さーん、今日ね……北澤さんと金谷くんが二人で同乗して営業に行ったんですよ…」 「おお、推し同士やん!」 宮崎の影響で、興奮すると関西弁がでる。 「そうなんですよお…。帰ってきてからも別室に篭って二人でなんかやってるしぃ…。もう私、色々妄想しちゃって……」 エミリは、手を胸の前で組んで天を仰ぐ。 「エミリー、まだ仕事中だよ。帰ってきてぇ」 敦子がふざけると「はあ…危うく召されるところでした 」とエミリは笑った。 営業部は若い男性が多く、エミリはその人達でよく妄想しているらしい。 敦子もたまに仕事で営業部に行くが、確かにスーツの男性同士が話しているのを見ると、余計な妄想が浮かんでくる。 「いいねえ…営業部は」 ふう…と敦子は溜息をつく。 「あー、そうですねえ…総務部はね…」 とエミリに同情されてしまった。 「まあ、その分気楽だけどね。御局様もいないし」 キョロキョロと周りを一応見回し、コソリと言う。 営業部の御局様、中野真美子嬢は今日も外でランチのようだ。 42歳だが、爪の先まで隙がなく、いつ誘われてもいいように毎日勝負下着を身につけているらしい。 「いくら美人でも、あれだけ気が強いとねえ…」 とエミリもコソコソ言った。 「けど昔、上司と不倫してたんでしょ?それで行き遅れて。その上司と揉めて…」 「そうそう、上司のほうは左遷されてね…」 人の噂話は、何故こんなにも楽しいのだろうかと思う。 自分とは、まったく無縁の話だし、仲良しの友達ならまだしも、よその部の御局様なんてどうなろうと知ったこっちゃない。 「はぁ…でも、私だって行き遅れの1人だしなぁ」 不意に弱音が出てしまった。 「何言ってんですか!敦子さんは、まだ全然若いし、可愛いですよー」 エミリは、優しくて思いやりのある子だ。 話していると、前向きな気持ちになってくる。 自分は自分。人は人。 処女の何が悪い?誰にも迷惑かけてないじゃん。 敦子は今更ながら、奈緒子に言われたことに心で反発した。
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