縮まらない距離

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七花は視線を上げ、奏を見た。 奏は七花を見つめた。その眼差しに、身体が強張るのが分かった。 七花はぎこちなく、口の中にある紅茶を飲み下す。 「困らないよ、俺は」 奏は言った。 そうして、僅かに瞳を伏せた。 窓から差し込む陽に照らされた奏の髪は、色素の薄い七花の髪と、同じ色をしていた。 胸の奥が、締め付けられるように痛んだ。 七花には分からない。奏が何を言いたいのか。 ――嘘。 心の裏側で、軽蔑の込もった声がする。 ほんとうは、分かっている。 この表情を、この空間を、自分は知っている。 それでも――考えないでいたい。 分からないままでいたい。 分からないまま……奏に。奏だけには、受け入れられたい。 「わ――私は、困る」 沈黙が意味を持つ前に、七花は言った。 奏は小さな微笑を零したあと、カップを手に取り、何でもないことのように答えた。 「だよな。知ってる」
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