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「とにかく、コカトリス飼育のための登録手続きを手伝うことになったよ。まりんちゃんが耐性持ちだと分かれば、いくつかの手順をすっ飛ばせる。おれは追加報酬を得て、まりんちゃんはピーちゃんと暮らし続けることができる。みんな幸せ、めでたしめでたし、だ」
んー、そこはアフターサービスにしておかないの?
テーブルの隅に置いてあった卵を手に取りながら言う。あれ、この卵、なんか触った感じがぶにょっとしてる?
「おれにだって生活があって――あ、ちょっと待て! その卵は!」
え? 卵がどうしたって?
柴本が気付いたときには、厚手のビニールのような感触のカラを破って中身を小鉢にあけたところだった。
下水が逆流したような――いや本当に食事の場にふさわしくない――悪臭が辺りに充満する。
楽しい食卓は一転して惨劇の場となった。
「うげぇぇぇぇぇぇ!!」
何これ臭っっっっっっっさ!!!!
「ダメだよそれ! コカトリスの卵なんだから!!」
転げるように椅子から立ち、口吻の先を掴んで顔をしかめた柴本が叫ぶように言う。
何でそんなモンここにあるの!?
「降瀬まりんから貰ったんだよ!! 昼飯に食おうとしたら臭くて食えたモンじゃないから捨てるつもりだったんだ!」
そんなものテーブルに置いておかないでよ! わたしが怒鳴るように言うと
「忘れてたんだよ! あーもう! 換気だ換気!!」
悪臭放つ卵を捨ててから、わたしと柴本はそれぞれ窓めがけて走り出した。
(了)
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