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時刻は2時を少し回ったあたり。暗闇の中、柴本は息を潜める。
護身用の道具は幾つか持ってきたが、住宅地に近い林の中で必要になることはないだろう。
コカトリスは本来ならば昼間に活動し、夜は眠る。見知らぬ場所で警戒してはいるだろうが、無闇やたらに動き回ることも無いだろうと柴本は判断した。それより、鉢合わせして発作を引き起こされたら回収どころではない。
警察には既に一報を入れてある。夜が明けても捕まっていないとなれば、銃を携えた猟盟会のメンバーとともに警察がやって来るだろう。
夜間の銃猟は法律で禁止されている。ハンター達が来る前にピーちゃんを生け捕りにする、それが柴本の作戦だった。
身を潜めて待つうちに、少しずつ空が明るくなってゆく。
卵から孵ってからずっと自然から切り離されて生きてきたコカトリスは餌の取り方など知らず、きっと腹を減らしているのだろうと柴本は頭の隅で考えた。
それから、依頼人の降瀬まりんから写メを見せてもらった時には嫌悪しかなかったのに、いつの間にか情を芽生えさせつつある自分に気付くと、その可笑しさに声を殺して笑った。
そうしていると、ガサリと何かが動き出す音に続き、カサカサと軽やかに走り出す音が柴本の耳に届いた。
「ケェーッ!」
それから間を置かず、けたたましい怪鳥音が辺りに響いた。ピーちゃんなる可愛らしい名が想像できない気持ち悪い啼き声だったが、これを柴本は待ちわびていた。
「よしっ!」
小さく快哉の声を上げながら、身を起こして音のした方へとそっと駆け出した。
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