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6.
「――とまぁ、そんな訳でよ。おれはピーちゃんを飼い主のまりんちゃんに引き渡してやったのさ」
柴本は得意げに語りながら総菜のパックのひとつへと箸を伸ばしながら言う。あ、ちょっと待った。
「コカトリスってのは恐がりだけど縄張り意識が強ぇんだってな。で、あんまり頭よくねぇから鏡に映った自分の姿も敵だと思っちまって、鏡の中の自分めがけて石化の視線を食らわせてやるんだと。まぁ、そんな感じで一丁上がりって寸法さ」
自分が箸で何を掴んだのかを確かめもせず、口の中へと放り込む。当然、わたしの制止は間に合わない。
パクチー、苦手って言ってなかった?
「ヴォエ!!」
食事中に発してはいけない類の悲鳴を上げ、流し台の三角コーナーめがけて駆けてゆく。
念入りに口をゆすいでも匂いは消えないようで、涙目になって戻ってきた。
「くそー、買ってくるんじゃなかった」
ちゃんと確かめて食べようよ。
それはそうと、どうして降瀬まりんはピーちゃんと目を合わせても平気なんだろう?
「んー、おれもよく知らねーけどよ。どうも効き方は個人差があるって話らしいぜ」
事故の再発を避けるべく、海老とパクチーの和え物をパックごと引き寄せて食べるわたしを、箸で指しながら言う。
それなりに躾けに厳しかったらしい家で育ち、防衛隊でも仕込まれたらしい柴本は、普段の所作は丁寧だ。
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