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タタカイ
「なぁ絹井、少女漫画って面白いか?」
ふと私は聞いてみた。
するとメガネ野郎はフッと笑いを浮かべ、メガネを整えた。
「少女漫画…それは神が与えし人間への文学。
男女、男男、女女、どのような恋愛関係の組み合わせでも素晴らしい『恋愛』を作り上げるもの。いわば俺たち人間へのゼクシイだ!」
「あぁプロポーズされたらのゼクシイね」
「そうだ、この文学作品こそが美しい恋愛を教えてくれるんだ」
絹井は地面に膝を付け、まるで神へ願うように腕を掲げている。
「男が少女漫画って…」
「おかしいか?なら女が少年漫画を読んでいるのも違和感を感じるぞ」
「ふっ。ジャンプ漫画は『友情・努力・勝利』だ!どこにも『女読むの禁止』とは書かれてないぞ」
「そ、そんな事を言うなら少女漫画だって憲法にも法律にも『男読むの禁止』とは書かれてない!」
「なんだ絹井やるのか?」
「そっちこそ吉開もやるのか?」
「ならば」
「今から」
「フリークだ!」
今までの私の部屋は、突然黒い光の染まる。そして私達の立っている後ろに王族とやらの椅子が現れ、私達は腰掛ける。
「ひとまず少女漫画の何が面白い?私はそれが理解できない」
非現実的な設定に、何が胸キュンだ。
そんな否定的な意見を考えていると、ウザ眼鏡はフッと笑い、まるで罵るような表情で私を見た。
「いいか吉開?『非現実的』という言葉には『現実的』という言葉が隠れている。
つまり『非現実的』のなかにも『現実的』に起こるであろう出来事があるのだよ!
食パン少女が現れることも、ぶつかりキスをすることも、イケメン少年が転校することも現実には存在する可能性もあるのだよ!!!」
「はっ、それは可能性の問題だろ?100%じゃない限り、理論的には証明されないだろ?」
「そんな事を言うなら吉開!少年漫画の世界のほうがありえないだろ!?
キントーンなんかどこにいる?忍術なんて誰ができる?いつ急に偽物の恋人役をする時がくる!!!???」
目の前に立ち上がりながら荒い息をする絹井が。こんなに燃えているやつだっけ?
「キントーンも忍術も昔の話だぞ?今現在にあるはずないだろ。だってキントーンに乗るより飛行機のほうが安全だし、それに忍術なんかなくても現在の科学が進歩している。
偽物の恋人は今で言う『仮面夫婦』のようなものだ。それに『彼氏彼女のフリ』もしている人間もいるだろうしな、この世の中」
「なっ」
絹井は一旦深呼吸をし、椅子に腰を掛けた。
「なら、吉開は少年漫画のどこがいいと思っている?」
「そんなの決まってんじゃん!『心が燃える』じゃん」
「雑だな!」
突然絹井のツッコミが飛んできた。
まぁまぁ聞いてくれたまえ、絹井どの。
「少年漫画からの名言は多彩だ。少なからず絹井も知っているものも多いだろ。
つまり少年漫画は、人生の『道標』なのだよ。
もし人生に立ち止まったら、私達が見るべきものはそう『少年漫画』だ!」
「違うわ!」
「少年漫画…いわば私達への聖書だ!」
「神様に失礼だ!」
「聖書の中を探してみろ、『そこで諦めたら試合終了だよ』とか『海賊王に俺はなる』とか『生殺与奪の権を他人に握らせるな!』とか、な👍」
「あるかよそんなもん!」
「氷の女王吉開選手と炎の使い手絹井選手。mare先生、どちらが優勢でしょうか?
「そうですね桝アナ。まぁ結局、どっちもバカなんですよ」
「この試合、終盤に差し掛かっていきます。続きはCMの後」
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