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 君との出逢いは、数か月前にさかのぼる。  あれは、間違えようもなく春だった。4月上旬、桜が舞い散り新生活に心躍らせる人たちがいる中で、僕は病院のベッドに縛り付けられていた。  それは文字通りの意味で、僕の身体のいろいろなところから管が出て、まるで開発途中のロボット。  僕が壊れたロボットになった理由は至極単純で普通で何でもないことで、きっとこの世界中で1秒間に10人は経験しているであろうこと――わかりやすく言えば交通事故だった。  誰も悪くない交通事故。強いて言うなら信号機の故障。  でもそれも点検を怠っていた訳ではなく、何の因果か僕がその道を渡っていた時に起きたのだから仕方がない。  そもそも交通事故なんてものが存在することを、身をもって体験するまで知らなかった。いや、勿論言葉としては知っていたけれども実感を伴う理解と言うのは天地がひっくり返るほどの威力を持っていた。  まぁつまり、そういうことだ。  窓の外から見える桜が蕾から満開になって、花弁を落としてただの木になっていく様子だけが僕が外界を知る唯一の情報源だった。それほどに僕は世界から取り残されていた。
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