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この世界はとことん俺の望みを叶えてくれる。異世界へ来てホントによかった。
翌日、ヴァーリアル領へ向かった。何事もなく無事に大聖堂に着いて司教様に品物を預けたのだけど、聖女様との面会どころか、ギルに取り次いでもらうことも出来なかった。
「せっかくギル様に会えると思いましたのに、残念でしたね」
「ははは。そうだね」
がっかりとしたユーディーにそう返事をしたけれど、俺はどちらかというと聖女様に会えなかったことに肩を落としていた。
帰る前にトイレを済ませ、司教様の部屋へ戻る途中、ふと曲がり角で足を止めた。
部屋もない無意味な廊下があるのだ。すぐ先で行き止まりになっている。
こういうところに隠し扉とかがあるんだよな。
壁を拳で叩きながら歩んでみる。すると、まさかの音の違いに足を止めた。
マジかよ! ノブも取っ手もない壁。念入りに壁を叩く。明らかに他と音が違う。
隠し部屋だ! 勇者の勘がそう働いた。
引けないなら押すしかない。だけどビクともしない。
少しぐらいなら穴を開けてもいいかな? と、小さな火の球を壁にぶつけてみた。すると、穴が開いたのだが、ぼろぼろと壁が崩れてしまった。
どうもこの世界の魔術は加減が難しい。ついやり過ぎてしまった。と反省したものの、目の前の狭い廊下に笑みが零れる。
当たりだ。この奥になにかがある。そう足を進めたのだった。
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