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でも、身を隠せる場所がない。仕方がないので、いつでも魔術が使えるように火の球をイメージしつつ、歩みを進めた。
そして、人の姿がはっきりしてくると驚いてしまった。
なんと全身白装束に身を包み、顔も白いものを被っている。
すげー怪しい人たちだ。なんかの儀式でも始めるオカルト集団? そう身構えた。
すると向こうの数人もこちらに気がつき、驚きを隠せていない。
相手は白い袖に手を突っ込み、そこから短剣を取り出した。どうやら話し合う気はないらしい。
しかし、タクトを出さないところを見ると、魔術が使えるわけではなさそうだ。とりあえず話だけでも。
「あのう。迷子になったんだけど。大聖堂へはどう行けば……」
そう微笑みかけ、警戒心を解こうと試みたけれど無駄だった。返事もなく、襲い掛かってきたのだ。
ブースト――そう詠唱を唱え、相手の攻撃を躱す。
「話だけでも聞いてもらえませんか?」
いかにも悪者の雰囲気があるのに、最近貴族様たちと会話をしているせいか、敬語が身に滲みついてしまっている。
ブースト――再び唱えて、相手の一人を背後から捕まえた。が、その柔らかな身体にびっくりした。
女性? 指に触れたその膨らみに思わず力が入る。その思いもよらなかった出来事につい油断をしてしまい、横から来た相手に斬りつけられてしまった。
素早く身を躱したつもりだったけれど、斬りつけられた手の甲から流れる血を見て、焦りを感じた。彼女たちは俺を本気で襲ってきている。この世界に愛されているはずの俺を。
白魔術で傷を治すと、焦りから魔術のイメージがうまく出来ない。火の球の作製が不発になる。
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