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「だ、大丈夫です。話とはどういったことでしょうか?」
「大聖堂でのことなんだけど。ユーディーにまで迷惑をかけて悪かったなと思って。ごめん」
俺は頭を下げた。
「ボクは勇者と呼ばれて、少しいい気になっていたみたいだ。君にまで嫌な思いをさせてしまって」
「ユウキ様。おやめください。わたくしは気にしていませんので」
「ホントに?」
「はい。ですから頭をお上げください」
いつも通りのおどおどした口調にホッと胸を撫で下ろした。
「よかった。嫌われたらどうしようかと思ったよ」
「話は以上でしょうか? それではわたくしはそろそろ部屋に」
「あ。もしよかったら祭りを回らない? せっかくヴァーリアル領に来たんだし」
そうユーディーに近づく。すると、扉を背にしている彼女が一歩後ずさる。傍で見ると肉付きのいい白い肌にドキドキとしてきた。
「今日のユーディーはいつもと違って、すごく綺麗だね。そのワンピースも……」
前の世界では口にしたことのない褒め言葉がさらりと出る。これも勇者の力なのだろうか?
目を彷徨わせた彼女が頬を赤らめ俯く。
「最近、髪を伸ばしているんだね」
邪魔な髪を彼女の背に回してどける。そして手のひらを添えている胸元へ目を落とした。隠されている部分が気になる。
わたくしは――と声を上げたユーディーに、無意識に伸ばしかけた手が止まる。
「わたくしは明日、アジェスト王の元へ挨拶のため、早く起きなければなりません。これで失礼いたします」
俺の腕を振り切るように扉を開けてユーディーが飛び出していく。
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