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「いや、ボクも今度いつヴァーリアル領に来られるかわからないし、もう少し滞在したいな」
と、大人しく彼女について行くことにしたのだった。
しかし二日後、好機がやって来た。
祭りが始まり、貴族街の公共施設が閉鎖されるとのことだった。上級貴族たちは休暇を取り、騎士たちは警備にあたり、人が少なくなるため、この日は特別に休日となっているらしい。
このチャンスを逃さないわけにはいかない。
と思っていたら、予想外な所から合いの手が差し伸ばされた。
「せっかくですので、祭りの観光に行ってみてはいかがですか姫様」
と、祭り前夜の食事の時間にウィゼールの一言。
いろいろと厳しい彼女からそんな言葉をかけてくれるとは思ってもいなかった。ユーディーを誘えば、敵領地だと反対されると思っていた。そもそも西側は剣術自体に興味を持っていないようだったし。
でも、ウィゼールの後押しがあれば百人力。一気に攻めるしかない。
ここぞとばかりに説得を試みる。
「行こうよ。少しは息抜きも必要だよ」
「ユウキ様にとっては初めての剣舞会です。見学ぐらいお付き合いしてあげては? 領主様からもそのための衣装も届いております」
「お父様から!」
「はい。さすがに一度は袖を通さなければ」
領主様からの援護も。もう公認じゃないか。ということは、手を出しても構わないということ?
メイスターが言っていた。本人の意思より親の承諾だと。
それでも渋っているユーディー。普段から外を出歩かない彼女には気が重いようだ。
「もしかしたらギルたちと出会えるかも。そうしたらあのリリーっていう、ちっさい姫様とも会えるんじゃないかな」
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