185話 よくある 閑話? 神様に認められた勇者

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 もう一人女子がいれば、なんて思ったが、よくよく考えてみればあの女番長みたいな姫は東側の姫だった。焦りからつい余計なことを言ってしまった。  そう悔やんでいたのだけれど――  ギル様――ユーディーがそうぽつりと呟いた。  これはチャンス。 「久しぶりにギルとゆっくり話がしたいな。大聖堂のこともあるし」  その言葉に彼女が反応した。そして少し悩んで「そうですね。あの騒動のこともあります」と祭りへ行くことを決意してくれた。  よし――と心で拳を握りしめ、内心で大喜びした。  そしてその翌日、人生で初のデートは最悪なものとなってしまったのだった。  ユーディーの髪に合わせた淡いグリーンのワンピースは、ざっくりと胸の部分が空いていて、その手のひらで隠されている部分に釘付けだった。  広場に着くと先に降りた俺はエスコートを装い、手を差し伸べた。  この世界の貴族たちは手を取り合うことを好まないと知っていたけれど、今の俺はナンデイーブ領領主にも公認され、付き添いのウィゼールも容認されているのだ。 「ユーディーはよく躓くから。せっかくのドレスが汚れると大変だしね」  少し戸惑いながらもユーディーが俺の手を取る。すると隠れていた胸の谷間が露になり、崩れそうになる顔を引き締めつつ、しっかりと目に焼き付けた。  ひと夏の出来事。少しぐらい大目に見てくれるだろう。と、そのまま手を放さなかった。すると多くの馬車が並ぶ広場で聞き覚えのある声を耳にした。 「あれ。ギルじゃないか」  思わず見つけてしまった彼に声をかけたことが失敗だった。
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