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なぜか、いつの間にか俺は女番長のリリー姫と街を歩く羽目になってしまったのだから。
ちっこいくせにやたらと力の強い姫に引っ張られるように。おまけにその付き人は貫禄がある。武器屋で木刀を持たせると、まるでカツアゲでもされている気分になる。
「そろそろ広場へ戻らない?」
そう店を出ようとすれば、売り物の剣で行き場を遮られ、斬りつけられるかとひやひやとした。
「ユウキ様。これは模造品ですわ。おほほほ」
と、俺の頭を小突いてくる。
そんな乱暴な姫様を止めることもなく、付き人は真剣を手にして、
「勇者様なら避けられると思ったのですが」
と、へらへらとしている。
なんだ、この凶悪なコンビは。ギルはよく、極悪人みたいな二人と一緒にいられるな。そう顔が引きつった。
早く戻ってユーディーとデートの再開を。
やっと広場に戻ってきてみれば、ユーディーがご機嫌そうにしている。級友と話して気分が和らいだのだろうか。なにはともあれ、これで楽しく始められる、そう思って彼女の手を取った――が、突然手を振りほどいたユーディーがあたふたとし始めてしまった。
そして、あろうことか、女番長の姫が短剣を掲げ、身分の暴露をおっぱじめた。そのとばっちりがこちらまで。
ウィゼールに引っ張られ、馬車に乗り込み、デートは失敗に終わってしまった。
でも、馬車の中では両手のひらをずっと合わせているユーディーは胸を隠すことも忘れ、嬉しそうにしている。そのおかげで、対面に座っていた俺には彼女の胸の谷間が見放題だったので、まあよしとして屋敷に戻ったのだった。
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