186話 よくある 閑話? 閉じこもり姫の苦悩

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186話 よくある 閑話? 閉じこもり姫の苦悩

(ペネシア視点になっています。第一部 37話でチラッと名前だけ出てきた少女です) 「お姉様が戻ってくるって本当なのですか?」  昼食中、驚きのあまり手を止めてお母様に聞き返した。 「ええ。先ほど護衛騎士から聞きました。しかも、勇者様と一緒らしいわ」 「ということは、お姉様は勇者様を射止めたということでしょうか? さすがですわ」  小顔で青い瞳を持つユーディーお姉様の麗しいお顔を思い出して、ついうっとりとなってしまった。 「いつ戻って来られるのかしら」 「今日の夕方には領地に入るでしょう」 「早くお会いしたいわ。王都や学園の話も、たくさんお聞きしたいですし」 「ペネシアったら。本当にユーディーが大好きなのね」  もちろんです――そう返事をしてお姉様に思いを馳せた。  わたしのことを理解してくれるのは、お母様とお姉様だけなのだ。  早くたくさんお話がしたい。  わたしは食事を急いで終わらせ、お姉様を迎える準備に取り掛かったのだった。  物心がついた幼い時からわたしがお城へ出向くと、大勢の人から称賛されていた。  いつ見ても美しい  女性ならその言葉に気を悪くする人はいないと思う。  わたしはいつも得意げにお礼を述べていた。  領主様であるお父様もニコニコと迎えてくれる。  第一婦人の妃様も、その姉妹のお姉さま方も、快く受け入れてくれていた。  でも、なにかがおかしいと思い始めたのは五歳の時の洗礼式だった。  同じ歳の貴族たちのお祝いでもあるのに、まるでわたしだけのお祝い事のように、みんなが囃し立ててくれるのだから。でも、幼いわたしはあまり気にも留めていなかった。  自分は姫であるから気を使ってくれているのだろうと。  勉学が始まり、ころころと恩師が代わることも、特に珍しいとは思わなかった。ただ、たまに目つきがだんだん変わってきているというぐらいで、気にしていなかった。  明らかに人と違うと気づいたのは七歳の、王都でのお披露目の儀式の時だった。
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