67人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝、早朝の鍛錬に出かけてみれば、すでにギルとユーディー様が集まっていた。
「リリー様! ギル様を止めてください」
二人に近づくと顔色の悪いユーディー様が開口一番に頼み込んできた。
キャンパスの芝の上で、昨日まで腑抜けだったギルが体術の鍛錬を行っている。
目を瞑って、素早い足さばきに、身体を左右前後に揺らし、鬼気迫る勢いで動き回っている。凄い威圧だわ。気合が入っている。
ユーディー様は半刻ほど前から鍛錬に来ていたらしいが、ギルは更に前からここにいてこの状況だったらしい。
「アルギニオとの対戦を辞退するように言ったのですが、聞き入れてもらえなくて」
彼女はどうやら何度も説得を試みたらしいけれど、思っていた返事がもらえなかったと言う。気になっている女子の前だと恥ずかしくて撤回が出来ない、ということかしら。
「わかりました。流石に今回は相手が悪いですし、わたしも説得してみましょう」
一段落ついたのか、動きが止まったギルに声をかける。
勝手にわたしを二人も想像して、攻撃を避ける鍛錬をしていたらしい。よく彼がそんな鍛錬をしているけれど、わたしには想像でどうやって鍛錬が出来るのか理解できない。
でも、今はそんな問題は後回しだ。
わたしはアルギニオの二つ名を教え、彼との対戦は辞めるように話を進めた。
するとギルは『剛腕の騎士』のことを知っていたのだ。岩を砕く剣術のことも。
最初のコメントを投稿しよう!