186話 よくある 閑話? 閉じこもり姫の苦悩

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 王都に入ると街の人たちがずらりと並んで手を振っていた。この時は、まあ、これが普通なのかなと思っていた。なぜならお城の敷地から出たのは、その時が初めてだったのだから。  儀式当日。領地地位が低いわたしは入城するのが最後だった。馬車を降りると凄い人だかりが出来ていて驚きを隠せられなかった。  身分が低いと理解していたわたしにとっては、少々意外だと唖然となった。  先着の方々は、もっと上位のご子息や姫、貴族たちのところに集まっているものだと。自分には魔力がないというのに。そう注目されていることを不審に感じ始めていた。  会場に足を踏み入れると感嘆の声が響いた。そして、多くの視線に戸惑ってしまった。自分は場違いだったのかしら? そう居たたまれなくなってしまった。  儀式が始まり、国王様の挨拶が終わると呼び出しがかかった。  使いである宮廷魔導士最高幹部のお話では、別室で国王様が待っているとのこと。  なにか粗相をしでかしてしまったのでしょうか? 心細くなりつつも、使いである彼女のあとに続き、国王様のもとへ向かう。 「月夜の美しい日に、国王様と出会えたこの日を嬉しく存じます」  そう跪いて挨拶をしたのだけれど返事がない。心配になって、しびれを切らしたわたしはお顔を上げてみた。すると、国王様とその側近のルシード様があんぐりと呆けていた。  わたしに気づいた二人は咳払いをして表情を戻すと、立ち上がることを許された。  そして立ち上がったわたしにぼそりと二人が呟いた。 「「なんとも美しい」」と。  黄金色の長い髪。黄金色の眉。黄金色の瞳。  人となにが違うのか理解に悩んだけれど、国王様が吐息を漏らしながら褒めちぎってくれる。 「ありがとう存じます」  それ以外に、どう返答すればいいのか困惑してしまったのだった。  会場へ戻ると同級の貴族たちが集まってくる。中二階で食事をしているその親御様たちもわたしのことを見下ろしていた。
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