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なにを言っているんだか。今回は立場が反対だ。強者が勝負を挑んできているのだ。それだと、つまり、ギルが負けることになる。
「負けるとわかっていて勝負を受けるなんて、正気の沙汰じゃないわ」
「負ける? 僕は負ける気はないよ」
そうギルがニヤリとして言う。その自信のある顔つきからは勝つことしか頭にないとわかる。
本気だわ! ――ふと集中力と精神力のことを思い出した。
そして目の前のギルは冷静に勝利しか考えていない。
全く、やれやれだわ。これだから脳筋は。そう呆れてしまう。
でも――もし勝負を持ちかけられたのがわたしだったら、ギルと同じように断っていなかったでしょうね。
「わたしに出来ることはあるのかしら」
「それじゃ『双剣の戦姫』様に相手をしてもらおうかな。リリーの足技を使う剣術が、まだよく想像できないんだ」
わかったわ――そう答えたわたしにユーディー様がおろおろとし始めたのだった。
午前の授業が終わると突然、午後の授業の中止が告げられた。
生徒たちがざわつく中、講師に呼びつけられた。
「リリー。すぐに魔術学校の職員室へ行くように」と。
瞼の上で、宮廷魔導士最高幹部エルゼの憤怒する顔が思い浮かぶ。
問題を起こしたのは二度目だ。また長時間嫌味を言われ続けられるのか。嘆息しながら隣の校舎に向かい、職員室に着くと驚いてしまった。
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