67人が本棚に入れています
本棚に追加
/400ページ
その向けられる視線は気味が悪くて、わたしは畏怖を覚えた。
それでも少しずつ笑みを取り繕い、姫として返答していた。だけど、子どもたちとの距離がだんだんと縮み始めだした。そして更には、わたしに触れる者が現れた。その者たちが少しずつ増え始めたその時、みんなの目つきが変わったのだった。
押し寄せてくる子どもたち。あっというまにもみくちゃにされて、わたしが床に倒れると、たくさんの腕がわたしに向かってくる。
わたしの名が叫ばれ、髪を引っ張られ、お顔や腕を触れられる。そして、子どもたちがわたしに触ろうと会場が混乱し始めてしまったのだ。
側仕えや護衛騎士たちが子どもたちを取り抑え、わたしが救出されると儀式は中断し、急遽、閉会することとなってしまった。それは前代未聞の出来事だった。
『絶世の美少女』『天使の微笑』などと、その事件後、わたしの知らないところで勝手な二つ名が王国中に飛び交っていたのだった
それが、わたしが人を避けるきっかけになったのだった。
お城に着いたお姉様から手紙が届いたのは夕方過ぎだった。
第三婦人のお敷地に戻る途中にお顔を見せてくれるとのこと。
お母様にお願いして夕食の時間を遅らせてもらった。そして、お姉様をお茶会にお誘いする準備を始めたのだった。
ワゴンには今年の春摘みの茶葉。お茶菓子には、今、中央で流行りの焼き菓子。お姉様の好きなお花も飾り付け済み。お気に入りのドレスに着替えて髪を櫛で梳く。最近覚えた化粧をして準備は整った。あとはお姉様の到着を待つばかり。
「落ち着いて座って待っては。そんなにそわそわと動き回っていては、せっかくのドレスが崩れてしまうわよペネシア」
「だって、体が勝手に動いてしまうのですもの」
まあまあ――とお母様が呆れている。でも、こればかりは自制がきかない。
最初のコメントを投稿しよう!