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お屋敷の玄関の前でウロウロすること半刻。馬車が止まる音を耳にした。そして、ベルが鳴らされる。
「ユーディー姫様がご到着いたしました」
扉の外から護衛の女性騎士の声がする。
「粗相のないようにお招きしてちょうだい」
「了承いたしました」
このお屋敷の中には基本、わたしとお母様以外誰もいない。側仕えはもちろん、侍女も女中も。だからお屋敷の敷地には護衛の女騎士や女性魔術使いが数名で警備されている。
「ユーディーです。入居の許可を頂きたいと存じます」
来ましたわ――扉の前でそう飛び上がりそうになる。
「どうぞ入ってらして」
「失礼いたします」
現れたのは、淡いグリーンのワンピースを着こんだお姉様。王都へ向かった時よりもなんだか大人ぽく、色気を感じる。
「お姉様。髪を伸ばしたのですか?」
「ええ。おかしいでしょうか」
「とんでもないですわ。とても素敵です」
「ありがとう存じます。ペネシア姫様」
手を胸に当て、会釈するお姉様に頬を膨らませた。
「お姉様! 二人の時はペネシアと、敬称なしで呼んでくださいとお約束したではありませんか?」
「そうでした。つい学園の癖が出てしまいました……出てしまったわ」
そうにっこりと微笑むお姉様。久しぶりに見たその笑みに、思わず抱きついてしまった。
毎日一人でつまらなかった日々。やっとお姉様とお話しが出来る嬉しさのあまり、自制が利かなくなってしまった。
「相変わらず甘えん坊ですね。ペネシアは」
だってこうして人に触れられるのも、お母様とお姉様だけですから。
そう目一杯甘えてしまった。
「これはシフォンですね」
自室にお姉様をお招きし、紅茶を点てる準備の間にお茶菓子を並べていた手が止まる。
「知っていらっしゃるのですか? 今、入手困難のお茶菓子ですのに」
「ええ。つい先日ヴァーリアル領の商店街へ赴くことがあったの。そのとき喫茶店で」
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