186話 よくある 閑話? 閉じこもり姫の苦悩

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 驚かせようと思っていたのに――そうがっかりとなる。 「でも、その時は一口しか食することが出来なくて。うれしいわ」 「そのような残念なことが。幻のお茶菓子と言われているのに」 「……ええ」  ん? お姉様の表情が突然暗くなってしまわれた。どうしてしまわれたのだろう。 「それでは、今日はぜひ味わって堪能してください」  一先ず元気づけるつもりでお茶菓子を勧めた。  満面の笑みを浮かべるお姉様を目視して、点てた紅茶をそれぞれのカップに注ぎ、わたしも席についてシフォンを一口含む。  しっとりとしたシフォンはミルク紅茶によく合う。目の前のお姉様とお顔を見合わせてにんまりとなる。この時間は本当に久しぶりだわ。ずっと待ち続けていたのだから心が躍る。 「お姉様。学園生活の話を聞かせてください」  そうお願いすると、お姉様は紅茶を口に含んでからお話を始めてくれた。  わたしはもう何年も、このお屋敷の敷地から出ていない。外の世界は一体どんな所なのかしら?   ワクワクしながらお姉様のお話に耳を傾けた。  王国の外からやって来た男性。  全魔術を使いこなし、魔導士と同等の魔力硬度を持っているらしい。  しかも、双剣の戦姫と謳われているリリー姫様との対決にも勝利したという剣術の使い手であり、女性騎士たちにその剣豪のご加護を、惜しみなく分け与える心優しい人のようだ。  更には、領地地位一位のマルセーヌ姫様とも親しく、一目を置かれているとのこと。  そうお姉様は楽し気に、嬉しそうにお話してくれる。  でも、その人とは―― 「よく手紙に書かれているギルという奴隷民族の人ですよね、お姉様」
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