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と、お姉様はギルという殿方に、なにやら強い思い入れが感じられる。もしや、奴隷民族の彼に、なにか吹き込まれているのではないかしら? お姉様の心優しいとろに付け込んで。
そもそも、どの領地も奴隷民族を受け入れようだなんて大げさすぎる。少なくとも我が領地では、そのような噂を聞いたことがない。このままではお姉様は取り返しのつかないことを犯してしまうのでは? と心配になってきた。
なんとかしてお姉様を助けなければ。
しかし、わたしはこの敷地から出られない。そうだわ。
「お姉様。わたし、一度勇者様とお話してみたいですわ」
そう勇気を振り絞ってお願いしてみた。
王国では七歳の儀式のあと、少しずつお務めをしていかなければならない。
姫の初めのお務めは、外交の仕事に就いて回る。そこで相手側の令嬢とのお茶会に勤しむ。
女性たちの中では婦人会というものがあり、そこには派閥というものがあるのだと教わっている。
自領地では、どこの婦人会に所属するのか。
他領地では、相手はどこに所属し、今後どのように付き合いをしていくのか。
それぞれを見極めなければならない。女性として将来を左右されるものだから。
でも、わたしは七歳の儀式のあと、人との接触に恐れと不安を感じてしまい、一人でお屋敷の敷地から出ることが出来なくなってしまっている。信頼のできるお母様が傍にいてくれれば、お城の敷地までは赴けるのだけれど、お城の敷地から出て人と会うことは体が拒んでしまう。
今までと同じように挨拶されても、目を合わすことが出来ない。
以前のように容姿について褒めてもらえても、素直に喜べなくなってしまっていた。
そのようなわたしにお姉様が歓喜の声を上げた。
「まさかペネシアが人と会いたいだなんて。わたくしがいない間に成長したのね」
「え、ええ」
しどろもどろと返答する。
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