187話 よくある 閑話? 閉じこもり姫の苦悩

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187話 よくある 閑話? 閉じこもり姫の苦悩

 遅くなった夕食の最中に、お母様に勇者様を招いたことを報告すると不安そうな表情を顔に浮かべられた。なぜなら、わたしがお屋敷から出られなくなってしまった原因が殿方にあるのだから。  でも、訪ねてくるのはお姉様が選んだ交流のある殿方。以前のようなことはないと思う。そう安心するように説得したのだった。  七歳の儀式以来、お務めが出来なくなってしまったわたし。それでも、こちらが出向かなくとも先方が訊ねて来るようになった。  わたしたちは領地地位が低いので、さすがに拒むことが許されなかった。不承不承ながらもお母様と一緒に出席し、挨拶を交わす。  面会には外交官はもちろん、次第に他領地の領主様から王子や姫までやって来るようになった。  そのたびに向けられる視線に怯えた。  彼らの笑みに吐き気がした。  すれ違う時にさりげなく髪や肩に触れられ畏怖した。  お務めが終わるたびにお屋敷で泣き苦しんだ。  お母様はわたしを包み込んでいつも謝っていた。なにもしてあげられなくて、ごめんなさい、と。  そのような日々が続いていたある日、お母様と敷地内を散歩していた時に、初めてお姉様と出会ったのだった。  七歳の儀式から数か月後。ヴァーリアル領で剣舞会が行われている夏のある日。この時期は暑さに加え、祭典に貴族が集まるので人が訪ねてくることも少なく、のんびりとした日々が続いていた。  つばの広い帽子を被り、お母様と並んでお屋敷の敷地を歩いていると、ふと見かけないものが目に留まり足を止めた。 「お母様あれはなにかしら」  と指さしたのは、足を踏み入れたことがない第三婦人の敷地だった。  敷地と言っても明確な区切りがある訳ではない。強いてあげるなら、城門からお城までの道を東西に分けて、西側にいるのがわたしたちの敷地だということぐらいかしら。 「あそこにいるのはウィゼールですね。なにをしているのかしら」
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